先日発表された新型BMW Z4のお披露目が国内外で人気ニュースとなっています。
ここで、BMWのオープンカーラインであるZシリーズの系譜(変遷・移り変わり)を軽く復習してみたいと思い筆を執った次第です。
さて、
BMW Zシリーズは、BMWは好きじゃなくてもZ3が好き、Z4(E85/E86&E89)が好き、という人々も多く、とくにZ3はBMWオープンの中興の祖ということもあり、販売から20年を経た今でも根強い人気を誇っています。
そんなZシリーズの新型Z4は当初Z5となってお目見えかと思われましたが、先般の発表の通り、「Z4」の3代目として2018年に市販車が登場する予定です。
BMW Z4の”4″の数字ってなに?
このZ3とかZ4とかZ5とかの”数字の部分”はシリーズ名(たとえばドラクエのような)ではなく、車格を表しています。BMWといえば3シリーズですが、Z3は3シリーズ(E30系統)をベースとしており、Z4はその一つ格上とされています。
※ 4シリーズの初代が2012年からとZ4誕生以後ですので、4シリーズのオープンカーというわけではないです。
ちなみに、5シリーズは5人乗りのセダンもしくはステーションワゴンであることからして、やはり今回の新型Z4はZ5ではなくてZ4で正解かと思われます。
まぁ、BMWの車格定義も時代によってかわったりするので何とも言えませんが。
>>BMW各シリーズ(車名など)まとめはこちら
BMW Zシリーズの系譜
はじまりは「Z1」から
Zシリーズの始まりは、Z1という1989年3月から1991年6月まで製造されたオープンカー。「Z」は、ドイツ語のzukunft(未来)から。あらゆる意味で実験的な車でありました。
こちらの車は街で目にする機会はほとんどありませんし、記憶にある方も少ないと思います。(8012台が製造され、そのほとんどがドイツ国内で販売)
このZ1の特徴は何といってもドア!ご覧くださいこの閉開を!!
ちなみに、この車、恐ろしいことがWikipediaに書いてありました。
エア・コンディショナーは装着されなかった。Z1のダッシュボードは非常に小さく、その中にヒーターと冷房ユニットの両方を収納する空間はなかったためである。何台かにはBMW E30の部品を流用してエア・コンディショナーを装着したものがあったが、その場合は暖房関連部品は取り外されたといわれる。
Z1はそのまま1シリーズ限りで終了。
BMW初のボンドカー「Z3」登場でZシリーズはスタメンに
マツダ(ユーノス)ロードスターが世界的にヒットし「ライトウェイト・オープンカー」ブームがやってきます。このブームに乗って誕生したクルマが「Z3」といわれています。
しかしながら、ロードスターの登場が89年、Z3は96年ですのでかなり年数が開いているため慌てて急造されたというわけでもなさそうです。
ロードスターが開いた市場にBMWが数年遅れで参戦したという形でしょう。
Z3は少量生産にとどまったZ1に比べ、世界的なヒットとなり、BMWに貢献しました。
その理由の一つには、BMWが当初から力を入れた広告宣伝にあります。スポンサードした「007ゴールデンアイ」への登場で、ボンドカーの仲間入りも果たしています。
また、ロングノーズショートデッキの美しいデザインは、BMWの日本人デザイナー永島譲二さんにの手によるもの。
生産はBMWでは初めてアメリカの工場で行われています。
「日本人がデザインし、アメリカで製造され、イギリスでボンドカーになり、ドイツのBMWが発売する」と、まさにワールドワイドな車。
ロングノーズショートデッキのレトロモダンなデザインと、BMWとしては手ごろな価格が受け入れられ、スマッシュヒットを飛ばす車となります。Z1とは違って、BMW・Z3は見たことがある方も多いのではないでしょうか。
美しいデザインと小柄なボディサイズはいまでも多くの人に愛されていますが、20年が経過した中古市場では今が底値であり、一番庶民に手が届くボンドカーとなっています。しかしながら、「Z3M」そして「Z3クーペ」と「Z3Mクーペ」は依然高値が続いており、特にZ3クーペはその特異なデザインがファンを魅了し続けており、復活を望む声がすくなくありません。
ユーザの手によるプロモーション動画、新型図なども。
Z3は1台限りのモデルとなりましたが、6年間で出たグレードは多様で、とくに前期は4気筒、後期は6気筒と同モデルでもかなりの違いが出ている車となります。(前期後期での外観上の大きな違いはリアのみ)
また、Z3のMモデルであるMロードスターは3.2リッターで最高出力「321ps(236kW)/7400rpm」・最大トルク「35.7kg・m/3250rpm」となっており、2シーターの小柄な車には有り余るパワーとなっていることから大変人気高い人気です。
ちなみに、BMWでいうところの「M」とは
スカイライン(ノーマル)に対するGT-Rみたいなものです。
BMW Z3はヒットし、BMWのオープン専用モデル「Zシリーズ」を既定路線に乗せ、大きく貢献したモデルです。しかんしながら、そうであるにもかかわらず、BMW社ならびにメディア各社からの評価は低いものです。
過去のモデル紹介などでは存在がオミットされることも少なくありません。。。登場初期の007でのゴリ押し批判がトラウマになっているのでしょうかね。残念です。
Z3から格上げされ、系譜はZ4へ
Z3のヒットを受け、Zシリーズはラインナップに定着を果たします。Z3は一代限りとされたものの、跡を継ぐ形でZ4が登場。しかし、実はZ4は「後継車」というわけではなく、Z3の上位モデルとして同時期に開発されていました。
初代Z4登場は2002年、2006年にはクーペモデルも追加。
Z3より一回り大きくなり、インテリア・エクステリアともにモダンで上質なデザインとなりました。
Z3もかなりモデル(グレード)が入り乱れていましたが、bmw Z4でも同様です。エンジンも4気筒と6気筒が存在。ただし、Z3が4気筒→6気筒であったのに対し、Z4では逆にあとから直4・2リッターモデルが追加となっています。
基本的にATモデル設定であり、当時は時代的にMTがないことに対して苦言的レビューもありました。
正直なところ、丸く大きなボディとたれ目になったZ4よりはボクスターに、、、という流れがあったことも否めない、、、。
初代Z4にもMとMクーペが設定されましたが、デザインはZ3のクーペスタイルとは違い、クーペらしい普通のクーペになっている。ただし、Z4Mには致命的な不具合(BMWは認めてない?)があるようなので、中古で買われる方は注意が必要です。(それでも初代Z4Mは名車の呼び名が高い。)
2代目「BMW Z4」は上質なオープン&クーペに
2009年登場の2代目Z4は「幌車」から「メタルトップ(ハードトップ)」に大胆に変更され、オープン&クーペスタイルに生まれ変わりました。(「クーペカブリオレ方式のリトラクタブル式ルーフ」だとか)
Z3やZ4のハードトップはポン付け型で一人装着はまず無理。装着したらしたで出先で取り外しなんてわけにもいかず、使わないときの置き場にも困るほどのものでした。(幌車の他のハードトップも同様でしょうが)
SLKに対抗でしょうか、当時はやりのメタルトップへの変更は、静粛性や快適性を大きく向上させています。
その反面、ルーフ(メタルトップ)がトランク内に折りたたまれてしまわれてしまうため、オープンを前提としたドライブでは荷物が積めなくなってしまうというデメリットがありました。荷物を多少多めに積んだ旅行ではオープンカーなのにオープンにできないという、、、。
ちなみに、Z3、初代Z4、2代目Z4(屋根閉じない)でもトランク自体には結構荷物が詰めます。
z3はトランクにゴルフバッグは入りませんが、初代Z4には入ります。2代目Z4(屋根閉じない)にも。
普通のセダンなどと比べればやはりトランクは狭いですが、日常使いには十分で、コストコなんかで結構大量にモノを買ってしまっても荷物容量はOKです。
E89型のBMWZ4の最大のデメリットは、メタルトップであるがゆえに幌を閉じたときに「荷物が積めない」「屋根の重さが一気に後ろに来るため重量バランスがおかしくなる」です。
デザインは獰猛になった、というか、Z3は別として、Z4はその時代のBMWのデザイン傾向の影響を受けています。
見た目のカッコよさ、メタルトップの快適性、エンジンの力強さなどから高い評価もある一方、比較されることの多いボクスターとでは「遅い」との評価も、、、。
スポーツオープンカーな「ボクスター」とスポーティーオープンカーな「Z4(E89)」とはそもそも趣向が違う気もしますが、同じような価格帯・車格ならば「ボクスター」という選択をしたくもなりますよね。
デザインで言えば、二代目Z4のほうがかっこいいと筆者個人的に思います。
そして伝説へ、新型BMW Z4 Concept
そして先日の新型BMW Z4 Conceptの発表。
トヨタとの共同開発であり、復活が言われているトヨタスープラとの兄弟車(腹違いの兄)となりそうです。
ロードスターとスパイダーのようなもんでしょうか。最近こういうの多いですね。
新型のエンジン等々の発表はまだ憶測の範疇を出ませんが、全モデルE89の反省を踏まえた点が見られます。
一つ目はメタルトップ(ハードトップ)をやめて「幌車」に回帰した点。
やはりメタルトップ(ハードトップ)のオープンにすると全然荷物が詰めないという点は痛すぎます。メタルトップのオープンカーは統計を取るまでもなく「屋根を開ける機会が圧倒的に減る」という事実があります。
幌だと開けたくなるけど、ハードトップだと普通の車の感覚になっちゃって全然開けない、と。
まぁ、幌でも全然開けない人もいますが、せっかくのオープンカー屋根開けなきゃ。真夏はきついですが、真冬だって日中なら暖房ガンガンかけてシートヒーターつければ全く問題ない。
ユーザーがオープンライフを楽しむかどうかまでメーカーが踏み込んで考慮したかどうかはわかりませんが、荷物が詰めなくて不便というのは世界中であったことでしょう。
NCロードスターRHTがメタルトップながらトランク容量が確保された点とは大違いでした。
BMW・Z3時代はライトウェイト・オープンカー市場の黎明期であり幌車全盛時代、Z4(E89)時代はSLKなどを見てもメタルトップであり、高級車市場では特にメタルトップ(ハードトップ)オープンカーが多く見受けられました。
しかし、ロードスターNDの発売によって、「幌」回帰の動きが出てきます。加えて、時代は車体に「軽さ」を求めています。そもそも「幌」か「ハードトップ」かにユーザーもそこまで気にしていない、ということもわかり始めたのかもしれません。
BMW Zシリーズは、Z3の後期型から幌に内張が付くようになり、ロードスターなどとくらべ直射日光に熱せられる影響が少なく、オープンカーながらクローズ時の快適性も高いです。幌車だからといって、極端に暑かったり寒かったりうるさかったりはしません。
つまり幌車で全く問題ない、どころか、仕舞った時のスペースの問題や重量配分の変化・機構の故障リスクなどを考えると幌で大正解ということになります。
二つ目はBMWデザインの系譜からの脱却。
初代Z4、2代目Z4はともにその時代のBMWのデザインを踏襲しており、ひらたくいえばその時代のビーエム顔となっています。
新型BMW Z4 Conceptは明らかにこの系譜から離れ、独特の外観となっています。
たとえば、名車BMW Z8のような、突然変異の派生車種のような(今後の編成によっては新型Z4のような系譜なのかもしれませんが)。
▼BMW Z8は伝説の名車、デザインは色あせずかっこいいね。
このBMW・Zシリーズデザインの変遷については、初代が良いデザイン、2代目が鯨、3代目が戦闘機、4代目で未来的、となんだかGT-Rの変遷に似てるのような感も受けます。(R33クジラ・R34戦闘機みたいな)筆者の個人的な感想としてですが。
新型Z4はその見た目からはラグジュアリー、スポーティーカーというよりは、スポーツを感じさせる速い車の印象がありますが、E89からの路線を脱却しスポーツに振っているのでしょうか。スープラと兄弟車なら”走り”を重視したことは十分に考えられます。
2018年発売予定、市販車の発表が待たれます。
以上、Zシリーズの軌跡を簡単に、ご報告いたします。